幼い私に死神が囁いた。
その死神との出会い以降、私の人生はハタチまでと決まっていたはずだった。
「あった」
ポ村という田舎の片隅…
噂を聞いて来てみたけれど、
おどろおどろしさは無くとても静かな場所。
恐怖は…無い…
キョロキョロと辺りを見回す少女。
(この村。初めてきたけど、何だか)
“ポ村の死の使者の像”
死にたいと思う者が像に触れると、死を与えてくれるという。
死の幇助をしてくれる像。
但し恐怖と痛みを伴うという。
(痛みは…幼い頃からあった)
自分に死を与えるのが、自分自身だとしてもそれは他者を殺すのと同じように罪になるらしい。
自分に死を与えるのは…
それほどの苦しみを伴うほどに罪なのか。
だからこの像に触れていい者は、恐怖や痛みなど、どうでも良いと言うくらい、この世に存在していたくないというものだけ。
身体の限界がきてしまった者には、
死を与えてくれる国があるという。
でも心の限界がきている者には、
だれも死を与えてはくれない。
自らが死を与える以外、この世から消える方法は無い…
この像の辺りに、人が近寄った形跡は見当たらない。
せっかくあるのに…
今までに触れた者はいるのだろうか?
やはり“痛み・恐怖”は敬遠してしまうのかもしれない。
確か…
簡単に死ねる薬を作る人、
この村にはそんな人の存在があるとも聞いた。
↑“楽な死に方”参照
人に死のうとしていることを、知られても良いという人なら、楽に死ねる方が良いだろう。
その毒薬を飲んだ人に解毒剤をのませたら?
毒と薬、どちらが勝つんだろう?
まだハタチまでは、間がある。
なのにこの身体は、どんどん生気を帯びてきてしまっている…
ハタチになったら、死ねるのでは無かったのか…
「毒薬と解毒剤どっちが勝つのか、実験してみたいなぁ…この身体で…」
「どうかなさいました?
道に迷ってらっしゃる?」
「!!」
(この村の大人…?わざとらしい質問)
村の人なら、ここがどんなに場所か分かっているはず。
「私、迷って無い。
行く場所なら自分で決めているから」
少女は、その場を去って行く。
「あの、手を出して貰っても良いですか?」
「え?」
少女は、そっとチーズを渡される。
「美味しいですよ。私の好きなものなんです。
ポ村を楽しんでいって下さいね」
「…」
大人がしてくる余計なお世話って大嫌い…
でも…
カサカサ…
貰ったチーズは食べておく。