「少しイヤなことがあった…」
ねこさんの本を取り出しながら、パゴロウさんは顔を曇らせています。
どうやらどんより気分を変えるため、本に熱中することにしたようです。
「ふぅ~」
ボクはストレスに弱いタイプだから人によっては、何とも思わないような些細な出来事なのかもしれない。
嫌なことがあるといつも、眩しいくらい晴れていても曇っているような…
明るい部屋にいても、豆電球にでもされているような錯覚に陥ってしまいます。
さっきまで鮮やかだった世界が誰かの手によって、グレーに塗りたくられたような錯覚…
「へぇ。
ねこさんて赤とか識別出来ないんだ…
それじゃあ車の運転は出来ないね」
霊長類は野菜や果物など、食べ物を見分ける時に色を判断する能力は必須です。
しかしねこさんなど夜行性の動物にとって、色を判断する能力はそれほど必要ではありません。
光のない世界でご飯を探す時には、鮮やかな色を見分けなくても良いのです。
なのでねこさんは大きな虹を見ても、芸術的な絵画を見ても、色とりどりの花火を見ても、女の子たちが愛らしいパステルカラーの洋服を着ていても、なんの感想も湧いてこないのです。
「そう言えばねこさんだけじゃなく、色覚異常っていう病気もあったっけ?」
【色覚異常】
先天性と後天性があります。
決して珍しくない病気。
色覚異常になると、色の区別が付きづらくなります。
そのためペンやインクの色等の判断が出来ないため、日常生活に支障をきたす事があります。
ただし、補正メガネでカバーすることも出来ます。
「自分が見ている世界…
他人も全く同じものを見ていると思っていた」
実際見えている世界は人それぞれ。
何となくその事が分かっていても…
それでも自分の価値観に無理やり当てはめ、他人も自分と同じだと思ってしまう。
勝手に周囲の人達も自分と同じ、暗いどんよりした世界を見ているものと思ってしまう。
実際は小さな事など気にせず、次のステージにどんどん進んでいるのに…
自分だけ暗い世界の中でうずくまったまま、いつまでも前に進もうとしない。
“いいんだ。
だってみんなにとっても、落ちこむような出来事だったでしょう?”
そんな風に決めつけて…
でもボクだって明るい素敵な世界を見たい。
少しくらい嫌なことがあっても、いちいちどんよりせず…
カラフルな気分でいられるように…