です。

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

色のない夢

「にゃきゃにゃきゃ」


名前の知らないねこが何か言っている。


ちょくちょく見かけるねこ。


そこそこ重たいねこ。


どうやらこのねこは夢を見たらしい。


ねこも夢を見るんだ…


「お前っ!
にゃこさんの話を聞いてるにゃかっ?」


ポ村に住む画家のトウキさんは、にゃこさんに向かって首を縦に振り頷きます。

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名前…にゃこさん…


にゃこさんが聞いて欲しい所以外を、聞いている様子のトウキさん。


「知ってるにゃか?初夢のこと。

大人のにゃこさんは知ってるにゃ。

お前は知ってるにゃか?

大人きゃ?」


そんな話をどこから聞いてくるのか、一生懸命説明してくる。


「お前山って知ってるにゃか?

こう…おっきなやつにゃ。

もこってなってるやつにゃ!」


にゃこさんが説明しているのは、山と言うよりは丘の事です。


「にゃこさんはね。

このお山に乗っている夢を見たんにゃ。

なんにゃかふわふわして、気持ちいい夢にゃったぁ」


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何やらその夢を見たことがこのねこにとって、自慢であるらしい。


「お山の夢はいい夢なんにゃよ。

今年にゃこさんには良いことが起こるんにゃ」


【初夢】
1月の1日の夜から、2日に入った夜にかけて見た夢のこと。


もしくは2日から、3日の夜にかけて見た夢のことを言います。


初夢の内容でその年の運勢が占われます。


吉夢を見るためには、七福神や宝船の絵を枕の下に敷いて寝ます。  


裏側に獏の絵があればさらに良いとされています。


にゃこさんはまゆさんから、七福神のイラストを貰いました。

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そしてにゃこさんは良い夢が見れました。


吉夢と言うのは、あの有名な一富士二鷹三茄子のことです。


一富士
高い目標や理想を表し立身出世を象徴する。

二鷹
可能性の広がりや、自由な行動力を表し開運や夢の実現に繋がる。

三茄子
事を“成す”に通じ蓄財や子孫繁栄を表す。


三茄子の後は、四扇五煙草六座頭と続いていきます。


良い夢は正夢となって、現実に夢が叶うとされています。



“良い夢を見た”
とにゃこさんみたいに心が安定して、幸せな気分になる…

それだけでも十分良い事だと思います。



ただし悪い夢を見たとしても大丈夫です。


獏のがその夢を食べにきてくれます。


ありがたいです。


だから悪い夢を見てしまった…

そんなことで、いちいちしょんぼりする必要は無いのです。



悪夢を食べてくれる獏。


獏とはもちろん動物園に行けば気軽に会える、白と黒のツートンカラーの動物ではありません。


身体は熊、鼻は象、目はサイ、しっぽは牛、脚は虎の幻獣です。


「にゃこさん?」


「なんにゃ?」


「…獏って知ってる?」


「なんにゃさ…

むずかしいお話したにゃか?」



「幻獣のこと。


悪い夢を食べる」



「夢を食べる?

どやって食べるにゃ?」


「…普通に口で食うんじゃねぇの?」


「にゃふうん」


かみ合っているのかいないのか…


ねこさんと画家さんは、何やらもそもそとお話を続けています。


よく眠るトウキさんもよく夢を見ます。



でも画家であるというのに、見ている夢はいつもモノトーンのものばかり。


普段周囲のものが何色なのかどうか等、気にしていないのでしょうか…


夢の中ではいつも見ているものの色を、再現出来ないのでしょうか…



「ずっと…」


「にゃむ?」


「白黒の夢を見ていると思ってたけど違った」


「しろくろ?」


にゃこさんには色の話は良く分かりません。


ねこさんは人間とは見ている世界が違います。


赤や緑などは人間のように見分けられないのです。



「白黒の夢のじゃなくてさ、毎日夜の夢を見てたんだ。


夜中に歩き回っている夢。

一人でずっとひと気のない夜の道を歩いている夢。


それをずっとモノトーンだと思ってたんだ」


真夜中の夢。


真っ暗なため、ただ色が分からないだけだった。


縁起が良いとは言えない夜の夢。


「俺は…
だからきれいな色の絵が描けないんだな」


光のない世界は、やはり色の見え方も違ってきます。


「夜?いいにゃにゃい!

にゃこ夜、大好きにゃ!」


ねこさんは暗闇でも良く目が利きます。


「……」


「夜の夢嫌いにゃの?
大人なのにこわいにゃの?


嫌にゃらその獏連れて来てあげるにゃ!
夢食べて貰えばいいにゃ!」



“悪い夢を食べる”
そんな不思議な幻獣獏。


夢を食べている光景を見たいと思った。


悪い夢を食っている途中で腹がいっぱいになったら、食いかけのまま去って行ってしまうんだろうか…


「でもいい」


「何でにゃ」


「獏が食いに来ないって事は、悪い夢じゃ無いんだよ」


「そうにゃよ。

にゃむ。夜はいいにゃ!」


にゃこさんはトウキさんが描いた絵を眺める。



「なんにゃか、お前の似顔絵みたいにゃ」


月を見つめる女性の絵。


「…これ?俺に似てる?」


「にゃ!」

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“光の世界が描けない”

それが今のトウキさん。


トウキさんは自分が描いた絵の上に座り込んでしまっている、にゃこさんを見つめます。



いずれはトウキさんの絵にも変化が訪れる日が、来るかもしれません。