秋の日曜日の午後、マメチュー先生たちは毎年楽しみにしている銀杏拾いをしています。
三すくみのお店に銀杏料理を出すために、ケイヒさんもお手伝い。
にゃこさんは見学中です。
銀杏はまず、黄色やオレンジに熟している種子を拾います。
熟している方が柔らかく、種を取り出しやすいからです。
「みなさん!見て下さい!大きい銀杏を見つけました!!」
「マメチュー先生すげぇ」
マメチュー先生、今日は子供みたいです。
どんなお子さまだったのでしょう…
「コレハ綺麗ナ銀杏デスネ」
「落チテスグミタイダネ」
落ちたばかりの銀杏は、やはりきれいで柔らかいです。
「なんか俺、さっきから干からびている銀杏ばっかり見つけてる…」
「もう少し早く拾いに来ていればよかったですかね?
こっちは潰れてますし…」
にゃこさんも一緒になって、きれいで大きい銀杏を探します。
「大きいのにゃっ!」
「にゃこさん、触っちゃだめですよ」
「にゃっ?」
にゃこさんはみんなみたいに手袋をしていません。
銀杏は素手で触るとかぶれる事もあるし、匂いもキツい。
洗ってもなかなかとれません。
「なにそれ、こわいにゃぁ」
「怖いですよ。だから気を付けて下さいね」
「にゃす!」
ケイヒさんがきれいで大きい銀杏を探し歩いていると、にゃこさんも一生懸命ついて行きます。
にゃこさんがいちいちついて来るのが面白くて、あちこち移動をしては銀杏を拾い歩く。
男の子同士で、一緒に遊び始めてしまっているようです。
「だーーー!!!」
「にゃまっ??!」
ケイヒさんの突然の大声に驚くにゃこさん。
「だからにゃこ、銀杏踏まないようにしろって!
かぶれる!臭いつくっ!」
「にゃふっ」
「ねこうんこ」
「にゃっ!!」
「うんこねこ」
「にゃまっっ!!」
ケイヒさんにゃこさんにポカポカ叩かれるの刑。
そんな二人をなだめるように、マメチュー先生が銀杏の匂いの原因を教えてくれました。
「本当に独特な香りがしますよね、銀杏って」
銀杏は他の生物に食べられないように、異臭を放っています。
銀杏にとってこの匂いは、マイナス要素ではないのです。
「でも結局は食べられちゃってんだよな」
「残念ながら美味しすぎたのです」
【銀杏の臭い物質】
・酪酸
人間の皮脂や足、チーズから発生する臭いにも、同じ成分が含まれている。
・エナント酸
腐敗物のような悪臭を放つ
イチョウは女の子しか、銀杏の種子をつけることはありません。
銀杏の臭いでご近所迷惑にならないようにするためには、男の子だけを育てる必要があります。
「そういえば学校や街路樹に植えられているイチョウは銀杏がならないやつばっかだ!」
「ちゃんと考えられているんですね」
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てんまさんは具合が悪くなって倒れているもち三さんを発見し、急いで駆け寄ります。
「どうされました?」
「いや、だいじょ…」
もち三さんの顔色は非常に悪く、どうみても大丈夫なわけがありません。
しかしポ村には救急車がないので、すぐに助けを呼ぶ事が出来ない。
(どうしよう…)
ポ村の医療機関はマメチュー先生の薬局と、くまじろ先生の病院のみです。
(すごい嘔吐した後がある…)
「こんにちは、薬剤師のてんまと言います」
「薬剤……」
嘔吐して汚れているもち三さんの口元を、てんまさんはタオルで拭いてあげました。
「大丈夫ですよ。
病院行きましょうね」
どうやら昼食後、しばらくしてから気分が悪くなったらしく、吐き気止めの薬を買いにマメチュー先生の薬局へ行こうとした途中で倒れてしまったらしい。
マメチュー先生…くまじろ先生…
いらっしゃるかな?
てんまさんはもち三さんをおんぶして、くまじろ先生の医院に連れて行くことにしました。
「あっあのっ」
「おしゃべり出来ますか?お名前は?」
「ええともち三と申します。
あのっあの…私重たいですので…」
「安心して下さい!私、力持ちなんです!
絶対落としませんから!」
「あっいや」
「もち三さん、気にしないで下さい!
気持ち悪くなったら誰だって吐くんですから!
お母さんだって、偉い先生だって…
神様だって吐きますよ、絶対!」
「あっあぁっ」
おどおどと、困っている様子のもち三さん。
(この方…マメチュー先生の患者さんだ…
薬局の方にはあまり顔を出さない人。
いつもマメチュー先生に直接相談しに行っている患者さん…)
次回へ続きます