前回の続き
都会行きのバスを待っていた、薬剤師のイチイさんと出くわしたねこさんたち。
ハロウィンの日に“とりっく・おあ・とりーと”と言ったのにお菓子をくれないイチイさんに対し、ねこさんたちからいたずらの刑です。
「えっ?なんだよ…うわっ」
ねこさんたちはイチイさんに抱っこされて、ねこ森町にちゃっかり運んで貰うことにしたようです。
ハロウィンの日にお菓子を持っていなかったイチイさんはいたずら…ではなくねこさんたちに抱っことおんぶを要求されたのでした。
もうすっかり精神的にも体力的にも、疲れ切っていたにゃこさんたち…
そんな時、このアイディアを思いついたようです。
これで夕暮れまでにねこ森町まで、楽に連れていって貰えそうです。
「いや、だって持ってねえもんよ、お菓子なんて。俺」
イチイさんは金銭的にはあまりご両親に甘やかされておらず、本人も金銭には無頓着。
持ち合わせは何もないみたいです。
いずれ経営に関わるのであれば、今のままでは彼には難しいでしょう…
ブツブツ言うイチイさんに比べて、にゃこさんは嬉しそうです。
「みんなっ、これでニャロウィンに間に合うにゃ」
「よかったねー」
「しょうがねぇな。で、ねこ森町?
場所分かんねえから案内して」
「このまま真っ直ぐにゃ」
「へぇへぇ」
イチイさんに乗っかっていると、悪霊も何だか急に怖くなくなってきました。
にゃこさんたちは初対面なのに、なぜだかイチイさんに心を許してしまったようです。
「夕暮れまでに頼むにゃよ」
「注文が多いこと」
「急いでにゃ~♪」
「よっしっ!じゃあ、捕まってろ」
「にゃ?」
イチイさんは、物凄いスピードで走り出します。
「にゃっ!?」
「冒険の旅に繰りだそうぜいっ!」
「にゃたー♪」
「振り落とされんなよなっ」
イチイさんはねこさんたちを乗せて…
そして実際にはねこさんたちが振り落とされないように気にしながら、どんどんどんどん前に進んでいきます。
「にゃきゃきゃきゃ!」
猛スピードなのでちょっと怖い…
でもちょっと楽しいねこさんたち。
なぜだかまゆさんの背中のように、安心感のある背中なのでねこさんたちも楽しめているみたいです。
でも…それでもやっぱり何か小さきものがまだ、ついてきているような気がする…
その存在に気付いているのかいないのか、イチイさんはそのままポ村の外れにある草原を、走り抜けて行きます。
秋の少し冷たい風がとても心地良い…
しばらくすると目の前に、うっそうとした藪が見えてきました。
「ねこ森町この辺だよ」
ダイちゃんが呟きます。
「そうにゃの?」
にゃこさんはイチイさんを突き飛ばして、藪の方に走って行きました。
「わっ!」
他のねこさんたちも続きます。
「ひっでえの。ほらねこ、このバッグは?
いらねえのかよ」
にゃこさんはかぼちゃプリンが入ったバッグも、イチイさんに持って貰っていたのでした。
「食いもんじゃん。食っちゃうよ?」
「ああっ!いるっ、いるにゃっ」
にゃこさんはイチイさんからかぼちゃプリンを受け取り、そそくさと藪の中に消えて行きました。
髪の毛をガシガシとしながら、イチイさんはにゃこさんが消えていった藪の方を一人見つめている。
そんなイチイさんにダイちゃんはそっとお辞儀してから、トト君と一緒に藪の中へ消えて行きました。
イチイさんに別れを告げたねこさんたちは、藪の中をかき分けワシャワシャと突き進んで行きます。
ワシャワシャワシャワシャ。
後ろを振り向く事も無く…
ワシャワシャワシャワシャ。
「にゃ?」
ようやく目の前が開けてきたようです。
「藪終わったにゃか?」
「そうみたい」
「みんな、来てるかにゃー?」
「大丈夫!」
ねこさんたちの今日の長い旅は、ついに終わりを告げたようです。
ポ村からねこ森町へ続く長い藪を抜け、いよいよ目的地に到着。
「ついたんにゃね~」
にゃこさんは感慨深げに周囲を見回すと、目の前に何かが…
遂に姿を現した小さきもの?
それはなんと…
「にゃきゃあっ!」
「魔女っ!?」
安心していたのもつかの間、突然目の前に魔女が現れました。
とうとうハロウィンの日に現れるという、魔女が出現したのでしょうか…
“今度こそ悪いやつ?”
「にゃこさん大丈夫?よく見て」
「にゃ…?」
にゃこさんはダイちゃんに言われたり通り、おそるおそる目を開けて魔女の方を再び見てみました。
「ふにゃ?」
なんと魔女の正体は大河くん三兄弟でした。
「なんにゃあ…」
「お久しぶりにゃ」
魔女のお帽子を被っている三兄弟たち。
秋月くんが一番上でお兄ちゃんたちに肩車されて、お帽子被ってマントをつけていました。
その下が葉月くんで一番下で肩車しているのが、大河くんでした。
どうやらハロウィンの仮装をしているようです。
よく見ると可愛い!
“大河くん大変そうにゃ…
お兄ちゃんは、大変なんにゃ…”
体重の軽い子順では、ないようです。
三兄弟は、にゃこさんたちを驚かすことが出来て嬉しそう。
「にゃふふふ♪」
「そうにゃ、大河くん、秋月くん、葉月くん!」
「にゃ?」
「いつもお世話ににゃっています」
「!!」
「ポ村のかぼちゃプリンにゃす!
これからもよろしくにゃす!」
「かぼちゃプリン!いただくにゃ~」
にゃこさんはまゆさんからの指令を、さっそくきっちりはたします。
「所でみんなポ村に来てたにゃか?」
ずっとついて来ていた小さきものの正体が、にゃこさんは気になっていました。
「?行ってないにゃ」
「違うにゃの?」
「にゃこさん、トトさん、ダイちゃんお待ちしておりました」
ねこ森町で突然、誰かが声をかけてきました。
「?マメ…?」
「いっ、いつからいたんにゃ?」
今日一日ポ村で感じていた謎の小さき者の気配は、マメチュー先生だったようです。
「マメ何でいわないんにゃっ!」
「失礼しました。驚かせてしまいましたね」
「んにゃっ!!」
まゆさんから、にゃこさんのお使いの話を聞いたマメチュー先生。
土曜日なのでマメチュー先生は午前中に薬局の仕事を終わらせて、ねこさんたちをずっと見守ってくれていたようです。
「みなさま、本日はお疲れ様でした。
いえ…お楽しみはこれからですよね。
さ、ではこちらへ」
マメチュー先生に促されるがまま、歩いていくねこさんたち。
(マメはねこ森町のネズミーランドでも、おしごとをしているのにゃろか…?)
魔女の仮装をしていた三兄弟は、仮装をチェンジするみたい。
どうやら今年のねこ森町のニャロウィンでは、ドレスコードがあるらしいのです。
「にゃにゃ?」
三兄弟の魔女の後ろから、可愛い黒猫の女の子たちが出て来ました。
ニャロウィンの夜は、やっぱり魔女と黒猫さんです。
ViちゃんとRiちゃんです。
頭にかぼちゃを乗っけています。
「女の子にゃ~、可愛いいにゃ~」
黒猫さんたちはニャロウィンの日はより、雰囲気が出ています。
「さあ、もうねこさんたちはみなさまパーティー会場で仮装をなさっていますよ」
「にゃい!」
みんなもう仮装しているんだ。
それなら悪霊たちに連れていかれない…
そう思うとにゃこさんは安心しました。
すっかり日も暮れています。
もうすぐニャロウィンパーティーが始まります!
「ニャロウィンの特別列車が到着しました。
みなさま行ってらっしゃいませ!」
次回へ続きます