トウキさんは、ポ村の有名な画家さんです。
ポ村ではよくトウキさんの個展を開催。
その時は外からたくさんの観光客が来るため、普段は静かなポ村がとても賑わい、更には潤いももたらしてくれます。
神出鬼没なのでほとんどの村人は、彼を見かけたことが無く、住んでいることを知っている人も少ないようです。
放って置くと、トウキさんは食事すらまともにとらない方。
そんな彼の事を、毎日ポ村の見回りをしている村長さんだけはしっかり存在を確認。
トウキさんは体調がよくない時もあるようなので、くまじろ先生やマメチュー先生の所に連れていきたいのですが、なかなか上手くいきません…。
その為、いつも見守り、差し入れをしています。
ですが仕事に集中している時のトウキさんは、村長さんがどんなに声かけをしても反応してくれない。
仕事の邪魔をしてはいけないと思いつつ、やっぱり心配になります。
村長さんは一応差し入れの果物を置いて、そのまま立ち去ります。
トウキさんは村長さんの声かけにも反応しませんが、自身に起きている異変にも反応しません。
だいぶ前から頭痛がしているはずなのに、集中している時は絵を描く手を止められません。
このあと、どんなに頭痛が酷くなろうとも…
現在、ポ村ではトウキさんの個展を開催中。
星の中で眠る子ども。
その絵画を眺めるケイヒさん。
星の中心部分には赤ちゃんが眠っている、そんな言い伝えのようなものがポ村にはあります。
赤子がお腹を空かせた時、不安で母を求めている時などに、母を探し泣いて暴れる。
暴れている時の震えは、地上にいるこちらに伝わる程です。
そんな時は早く愛情を与えて、赤子を安心させてやって欲しいと思います。
地球にはどんな赤ちゃんが眠っているんだろう…
寒い冬の夕方、一酸化炭素中毒になった事がありました。
ゲームに集中し過ぎて、途中でやめられなくなって…
集中している時は仕事でも遊びでも、なかなかやめられないものです。
“頭がいたい”
そう感じていてもそれを放っておいたら、酷いことになっていました。
頭痛の原因:石油ストーブ
まず凄まじい頭痛に襲われました。
部屋の中に一酸化炭素が蔓延している!
そう思ったため慌てて窓を開け、外の涼しい空気を取り込みました。
自分の中にある澱んだものと、外のキレイな空気とを入れ替えるために。
窓辺でしばらく座って休んでいたのですが、目も開けていられない程の激しい頭痛に加え、吐き気も出て来て、次第に座っていることすらツラくなってきました。
不安で泣きそうになりながらも這うようにベッドではなく、トイレのそばまで行ってそこで倒れ込む。
いつでも吐けるようにトイレのそばへ行ったのですが、その時にはもう立ち上がる事すら出来なくなっていました。
体が重く、ピクリともに動かす事が出来ない。
まるで体に物凄いGが、かかっているように重かったです。
このまま地球の底に、沈んでいってしまうのだろうか…
星の中の赤子の所にまで?
最早重いというよりは、体は痺れて動かない状態。
指先だけでも動かせないだろうかと試してみる。
そう思う一方で、星の中に眠る子どもが頭をよぎりました。
体調は最悪、不安でいっぱいの中、そんな好奇心がムクリと出て来る。
一酸化炭素中毒で死んでしまうかもしれないのに…
“星の中に眠る子ども”
誰かその子どもを見た人がいて、それを書きとめたのだろうか。
他にもペガサスとか天使とか妖精とか、ああいう架空の生物にも全部目撃者がいるのかな?
病が原因で幻聴を聞いたり、幻覚を見たりする人がいるというのは聞いたことがある。
幽霊や宇宙人、不可思議なものを見てしまう事もあるのだという。
本人にとっては噓でも何でも無く、本当に見えていたんだろう。
星の中に眠る赤子だけでなく、地上にいるものたちの中にも母なる太陽に近付きたい人たちが、少なからずいるように思う。
ペガサスに乗って少しでも母に近付くため、空高く飛んで行くんだ…
そんな思いから、架空の生物たちは生まれたんじゃないのかな?
でも調子にのって近づき過ぎると、突き放されてしまう。
千尋の谷に子どもを突き落とす獅子の母みたいに、近付きすぎるとイカロスの蝋の翼のように羽根を溶かされ、真っ逆さまに地上に落とされるんだ。
優しいだけじゃ無い母。
でもつかず離れず、見守り続けてくれる母。
どっか遠くに行かれたら、すげぇ困るし。
星の中の子どもが、暴れて困る所の騒ぎじゃない。
必要な光…
立ち尽くしてぼんやりとしているトウキさん。
白昼夢?
色のない光の世界…
音もない。
目がチカチカする。
光のモンスターが近付いて来ている…
トウキさんは絵を描くことに集中し過ぎて、頭痛を放置していると音や匂いや光が極端にダメになってしまう。
ケイヒさんが体験した一酸化炭素中毒の時のような、吐き気と頭痛。
少し身動きをしただけでも、割れるような頭の痛みを感じる。
それでも激しい頭痛で立っている事が出来ないため、頭に振動を与えないように静かに横になる。
太陽がすぐそばに来ているような光。
光から逃げてしまいたくても、動くことが出来ない。
“あ……”
太陽の匂い。
太陽…落ちてきたのか…
しんどいながらも、目を開けてみると背中にねこが乗っかっていた。
日の光をたっぷり浴びて遊んでいたのか、そのねこからは太陽の匂いが漂ってくる…。
そんな気持ち良さそうに眠るにゃこさんにつられ、トウキさんもそのまま眠り込んでしまいました。
しばらくすると、キャットセラピーの効果でしょうか…
“治った”
トウキさんの頭痛は、すっかり無くなったみたいです。
まだ眠っているにゃこさんを背中からおろし、村長さん差し入れのパイナップルを見つめます。
おそらく喉が渇いたのでしょう。
パイナップルから水分摂取。
頭痛の原因を熱中では?と思ったのかもしれません。
なのについついパイナップルの不思議なカタチに魅了されて、トウキさんは絵を描きたくなってしまったようです。
にゃこさんと同じく、大人になっても世話のやけるトウキさん。
これからも当分、村長さんによるトウキさんのお世話は続きます。