猫屋敷から我が家(実家)に遊びに来る、細くて小さい黒猫のお嬢さん。
名前はミルクちゃんです。
遊びには来てくれるのですが、お触りは本人にキツく禁止されています。
そばに行くこと、触れる事は許されない。
とは言えこちらが外出する時に、誰もいない家の中にひとり置いていくわけにはいきません。
「ミルクちゃーん、おうち帰ろー」
「…………」
だいたい言葉で説得される子ではありません。
仕方なく嫌がるミルクちゃんを抱き上げ、猫さんたちの出入口である縁側の窓から出て行って貰う。
するとミルクちゃんは素早くこちらを振り向いて…
毎回帰り際、引っぱたかれてしまう…
そしてそのまま振り向くことなく、走り去っていく。
何なの…?
スカした女…
気取り屋でツンツンした女子ミルク。
そのミルクちゃんがある日、口に何かをくわえてどこかへ走り去ろうとしていました。
“狩人っ!”
小鳥か何かが、ミルクに捕まっちゃったのかな?
追いかけて様子を見に行く。
違う、小鳥じゃない、あれはっ。
“ねこの赤ちゃん!”
ミルクちゃんはねこの赤ちゃんをくわえながら、どこかへ連れていこうとしている。
あのツンケン女子ミルクにも母性が?
“アタシがママよ。ママはアタシよ!”
でもミルクちゃんは、子育てなんてしたこと無いはず。
ホントに母性?その子どうするの?
どこへ連れて行くの?
その子はどこの子なの?
やっぱり心配でミルクちゃんを追いかける。
でもねこさんのスピードに追いつくはずもなく…
丁度その時、猫屋敷のご主人が現れ、後の事はお任せする事にしました。
ねこの赤ちゃん大丈夫かな?
気になっていたのですが、残念ながら二度と赤ちゃんを見かける事はありませんでした。
猫屋敷の方にその後の事を、訪ねる機会も無かったのです。
ミルクちゃんが、屋敷の中で育てているのだろうか…
しかし当のミルクちゃんは、その後も我が家にひとりでやって来て…
あんまりママ感は、出てきてはいないようです。