薬剤師として、知識だけあってもダメだということは分かっています。
ですが自信が無いボク、パゴロウは暇さえあれば勉強したくなる。
その為今日は、通勤しながら本を読んでお勉強。
“駄目!ながら歩き!”
余所見しながら歩いていたパゴロウさんは、薬局が建つ丘の途中にある丸太につまづいて、コロンとひっくり返ってしまいました。
「ああ、もうっ。朝から恥ずかしいっ」
「パゴロウさん?」
「マメチュー先生!?
おっおはようございます」
転んで草まみれになってしまった、パゴロウさんの草をマメチュー先生は、優しく払ってくれました。
「ありがとうございます!すいません!ホントすいません!!」
「パゴロウさん、そんなに気にしないで下さい。
さぁいきましょう!立てますか?」
(転んで草まみれになる新人…ホント、ボクって仕事の出来ない人の典型みたい。
せめて、足手まといにはならないようにしたいのに)
薬局内のお掃除中。
張り切り過ぎたパゴロウさんは、勢い余ってホウキでクラゲさんを吹き飛ばしてしまいました。
「クラゲさん、ごめんなさい。本当にごめんなさい」
謝りながらパゴロウさんは学生時代に研修先で、出会ったベテラン女薬剤師の事を呟いていた、モンスターペイシェントさんを思い出す。
「簡単に辞めさせる事はできないし。
同僚にとってもそれこそ、患者にとっても迷惑だし。
給料だけ貰いにくる役立たずの邪魔人間」
“ギクッ”
(ボクのこと?邪魔な存在。迷惑な存在)
-熱ガ出ソウナ予感-
邪魔者扱い。
休日になると出現。
家の中でゴロゴロしている昭和オヤジ。
(パゴロウさんの偏見)
“トゥルルルル、トゥルルルル”
ショポンと落ち込んでいたパゴロウさんの耳に、薬局に電話がかかってきた音が聞こえる。
(電話っ)
パゴロウさんは慌てて受話器をとる。
(新人のボクに出来ることっ)
そう、あのベテラン女薬剤師は電話を取ることすらしませんでした。
のちに聞いた話です。
あのベテラン女薬剤師はその後、患者さんに暴言を吐いた事が問題となり、上司に注意されたそうです。
本人には暴言を吐いた自覚は無かったようですが、さすがに居づらくなったのか、介護を理由に辞めていったとのこと。
残念ながら、こういうお話は珍しく無いようです。
暴言を吐かれた患者さんって、モンスターペイシェントさんじゃないよね…
パゴロウさんはその時、電話を受けていた事を思い出す。
「はい、パゴロウです」
「?」
「えっと、マメクスリカフェです」
「あら、この間の男の子ね」
電話をかけてきたのは、患者さんのキノコさんでした。
「マメチュー先生に代わって頂ける?この間のお薬の相談がしたくて」
「はい、お待ちください」
(ボクは相変わらず昭和オヤジ…)
じつは電話が鳴る5秒前に、気付く事が出来るパゴロウさん。
でも今の所ボクはその能力と同じ位、役に立てていません…
(やだなぁ)
また熱が出てきてしまいそう。