マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

誰にでもあるよね、こんな日は

大量にカゲが、ポ村を通過。

 

そんな日はとても心が、ざわつきます。

 

人によっては、食欲不振・睡眠障害等の症状が、あらわれる。

 

他に不安な思いが心をしめたり、全てのやる気が失われたりする事もあります。

 

そんな時クロ太さんは、心を落ち着かせる為、深呼吸。

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カゲの通過によって突然湧き上がる、孤独感や消失感に押し潰されないように、深く息を吐き出します。

 

心に巣くおうとする、そのモヤモヤを吐き出すように。

 

皆さんはそういう時、どうしているのでしょう。

 

大量にカゲが通過していった時は、集団で知らない人に、心の中を土足で上がり込まれた気がします。


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一方ボンヤリと空(クウ)を見つめるてんまさん。

 

“忘れちゃったの?おねえちゃん”

 

てんまさんは、事実があやふやにならないように、絵に描いて覚えます。


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だけどカゲの存在を感じると今起きたことでも、時系列から何から混乱し、人に説明することすら出来なくなってしまう。

 

皆との楽しい思い出も忘れてしまいそう。


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(やだなぁ、意地悪しないで欲しいなぁ)

 

早く書きとめないと…

 

(あれ?あれあれ??)

もう忘れてる…?

 

幸せな何かを取られ、不安な何かを置いていかれた感覚。

 

(やだなぁ…)


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「あんたはホント、幸せなんだか、不幸なんだか分からない顔してるよね」

 

「まゆちゃん?」

 

「ほれ。ベニテングタケの仲間。


グルタミン酸の10倍の成分が入っててウマいらしいよ。
旨み成分に引き寄せられてハエも食べにくる位。
でもどっかの国ではそれを利用して、殺虫剤みたいにして使ってんだって。


これで人を殺すのはなかなか難しいと思うけど」

 

「…美味しそうじゃないものね。見た目は可愛いけど」


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「ホントだぁ。可愛い!私ね…」

 

「うん?」

 

「絵本の中のお姫様になりたかったんだ」

 

「てんまが?!へぇ何か意外。
あたしは逆に嫌だったな。


自分が女の子みたいになるのは。


七五三も嫌でさ。
可愛い着物を着させられるのがホント嫌で。


罠にかかった猪みたいに暴れ回って、結局着なかった。 


中学生になって、制服着るまではスカート履いたことなかったなぁ」

 

「まゆちゃんらしいエピソード。まゆちゃんはさ。口が悪くて、育ちも悪い王子様みたい。」

 

「どういう王子?悪口?
ある日突然出生の秘密を聞かされるタイプの奴?」

 

「さらにホントは、勇者なの」

 

「設定うるさいなぁ」

 

「でもちょっとだけ優しい」

 

「武器それだけかよ」

 

「最初から持っている薬草みたい。少しだけ回復してくれるの」

 

「そんな奴、出生の秘密明かされても何もできなくてねぇ?」

 

「まゆちゃん、私は薬草の力すら持ってない。人を回復させてあげることなんて出来ない。

でもね、私を一緒に世界を守る旅に連れっててくれたら、まゆちゃんだけは守ってあげるからね。

ホントだよ」

 

「ポンコツ勇者を?そんな価値あるかね」


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「表情ちょっと戻ったな。さっき“心に鍵かけてます”みたいな顔してたから。原因カゲ?ひょっとしてカゲ相手に人見知ってた?知らない人間苦手だよなぁ、お前。患者以外は」

 

「……」

 

「あんなの人じゃない」

 

「私、人形にも人見知りしちゃう」

 

「アホ!しっかしさ、何で人って生き物は、嫌な事がないと、幸せを実感する事ができないのかね?


この世界は変な設定が、いっぱいあるよな。


変なもん食って体壊したら、薬飲むとか。


そもそも体壊すって設定が、いらない。

“何でも食える元気な体”で良いじゃんな?」

 

「私たちのお仕事無くなっちゃうよ」
 
「お前さ、勝手に組み込まれた本能や設定に振り回されるなよ?


まぁ、例えばだけど…
妹と比べる→自分を不幸に思う
みたいな設定さ…


あたしは、兄弟間に存在する設定についてはよく分からないけど。


一人っ子だから。


もしそういうのあるなら、自分で設定作り変えろ。」

 

「どうやって?」

 

「知らねぇよ。人に何でも聞くな。てめぇで考えろ!じゃなきゃ自分の道を歩いて行くことなんて出来ねぇよ」

 

「難しいね」

 

「簡単じゃつまんねぇだろ」


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「じゃあな。食うなよ?ベニテングタケ」

 

「どこ行くの?座って。もうちょっと話そう?」

 

「……」

 

でもその後、まゆとてんまは二人で無言のまま、しばらく座っていただけでした。