森の中に佇むのは、まるで生クリームみたいなパティシエ・マルズさんが営むスイーツショップ。
ナッツやフルーツ、野菜等を使用したケーキを中心に扱っています。
もうすぐ、営業終了の時間。ケーキはもうあと一つで完売です。
マルズでお手伝いをしているりーちゃんとドングリさんは、一日働いて空腹状態。
そんな二人にマルズさんは、優しく語りかけます。
「あと5分我慢してね。そしたら余ったケーキ食べて良いからね」
「あい!りーちゃんガマンするです」
既に同じケーキを食べていたキノコさん。
「ケーキ、美味しかったわよ。とっても」
「あと、あと4分30秒!」
チリン、チリリリン
「いっ、いらっしゃ…ませっ。うぅ、うえぇんっ」
「えぇ~?うれし泣きじゃないよね。買っちゃダメだった?」
りーちゃんは、一生懸命歯を食いしばって、涙を我慢します。
「お買い上げ…ありがと…ざいますうぅ」
気持ち良くケーキを買う事が出来ない店、パティスリーマルズ。
USAはカウンターに置いてある瓶に気付く。
「これっててんまちゃんのハチミツ?」
去年りーちゃんがてんまに貰い、しばらく使っていなかったハチミツ。
「りーちゃん、パンケーキ作ったら食べる?ハチミツのっけて」
まだグズグズ泣いているりーちゃんの為に、パンケーキを作ってくれるというマルズさん。
ただケーキを買いに来ただけのUSAだが、何となく申し訳ない気持ちがあったため、ハチミツの瓶を開けてあげることにする。
「え?何これ?!かったっ!ケンシロウ用?」
(無理!手痛い…)
りーちゃんに瓶を返そうとするUSAだが、期待に胸を膨らませた幼き瞳が、こちらを見ている事に気付く。
(やっばっ)
「ちょっと、ちょっと待っててね」
調剤事務員。人々を助けるお仕事をしているUSA。
“いつもありがとう。貴方の笑顔に癒されるわ”
そんな一言がやる気につながる。
喜んでもらいたい。
人の助けになりたい。
「く~~~~~!!!」
(手があぁぁぁ~!)
(あたし・客。ねぇねぇマメチュー先生。血管切れたら死にますか?死ぬの?どうなの?こんな状況なのにすっごくスマホで調べたい。でもキラキラお目々で見つめられているあたし。でもケンシロウではないあたし。)
“開けられないっっ!”
そっと助け船を出してくれたキノコさん。
キノコさんからのアドバイス。
冷蔵庫で保存していたから、瓶の蓋が収縮してかたくなってしまったのね。
ハチミツやジャムは、糖分粘度が高いから瓶の縁につくと、カチカチにかたまってしまうの。
普段から使うたびに、汚れないよう拭いてからしまうと、かたくなるのを防げるわよ。
私ももうおばあさんで、開かなくなったら困るから、キチンと綺麗にしてるのよ。
とりあえず、蓋を温めてみましょう。
それでも開かないなら、ゴム手袋をしてから開けてみると良いわよ。
マルズさんの小さな手袋を借りて、“キツくて血、止まらないカナ?”なんて思いながら瓶を開けてみるUSA。
「おいし~」
嬉しそうにハチミツののった、ほうれん草入りパンケーキを食べるりーちゃん。
とりあえず、血管切れて死ぬことがなかったUSA。
無事、蓋をあけられて一安心。
「りーちゃん、このケーキ半分こしない?」
「しない」
「冷たっ。」
りーちゃんからはやる気につながる一言は、貰えないUSAさんでした。