マメチュー先生の調剤薬局

マメチュー先生の調剤薬局

ねずみの薬剤師、マメチュー先生の日常と、調剤薬局でのお仕事を薬の知識も交えながらほのぼのと描いています。猫好き、猫飼いの管理人の飼い猫エピソードも時々登場します。

夢森町 その1

昔っからこうだ。


なんでこういう人間が、私のまわりに配置されるんだろう。



妹、同級生、同僚。


嫉妬する。



こういうタイプが近くに来るたびに、嫉妬しなければならない。



あ〜、酔っ払って早く忘れたい。



さて。



古い友人である、あいつん家に行こうか。


それともどっか、ふらっとお店にでも寄ろうか…



「見たことのない店がある」


“ここでいいか”




「いらっしゃいませにゃ」

「こんばんにゃ。この町はねこ森町というの。深い時間ににゃると、夢森町ということもあるの」


「へぇ?」


“この店の…店員?”


初めて入る店内を見回してみる。


店の中から見ているだけで癒されるような、不思議な雰囲気を醸し出すねこが現れた。

違和感を感じた気がしたが、なぜかいつの間にやらその光景を受け入れていた。



店員らしきねこが説明しているの場所は、不思議な町にある、明かりがポツンと灯る一軒のお店。



お店の中は、ねこだらけ。


ねこカフェ?

「ちょっと違うにゃ。ここは“夜カフェ・夢森町“メニューはないにゃ。提供するのはシェフの気まぐれ料理にゃ」



夜もだいぶ更けた時間に現れるというお店。



もしかしたら夢かもしれないし、やっぱり現実かもしれない。



普通には来られないはずのねこ森町に、ひょんな場所から偶然入り込めてしまった…

そんな感じでしょうか。



この場所では皆いつも、記憶が曖昧になってしまうと言います。


でもそれは時間が経つと、よくある話。



実際にあったことなのか、夢だったのか…

それとも聞いた話だったのか、テレビで見たことだったのか、よく分からなくなってしまうことは誰しもあることです。



その現象と同じようなもの。



夢森町で時間を過ごすと、現実であった嫌なことも忘れがちになってしまうのです。




一生消えないシミのように、あんなに繰り返し思い出し、忘れられないことであったとしても…




そんな“夜カフェ・夢森町“にフラッと現れた若い女性。




「好きなところ座るにゃ」



「どうもー、ビールある?」


いつの間にか、行きつけのお店のように馴染んでいる。


「ないにゃ」


「ええ?」



“注意”
このお店には気まぐれ料理しかありません



「飲みたかったんだけどな。じゃあ、それでいいや。あんまお腹減ってないけど」



携帯をいじりながら料理を待っていると、ふと仕事のことを思い出してしまう。


ああいやだ。
だから酒飲んで忘れたかったのに。



“あいつ、私の資料の確認するように、だいぶ前から頼んでいたのに“



自分より後から頼んでいたはずの、同僚の可愛らしい女性の仕事を、先にやってあげていた上司。




“忘れられてんのかな?“



そう思って、進捗状況を上司に確認してみる。



「あ、ごめん。今ちょっと忙しくて」



そうか、忙しいのか。


でもあの可愛げのある、娘の仕事はやれるんだ。



あの子の仕事は確か、そんなに急ぎの仕事ではなかったはずだけど。




なるほど…



単純に可愛げのない自分の仕事は、後回しにされてしまっただけなんだな。



「ん…?」


そんな若い女性の前で、ねこさんがニコニコとおもちゃを持って立っていました。

続きます。