昔っからこうだ。
なんでこういう人間が、私のまわりに配置されるんだろう。
妹、同級生、同僚。
嫉妬する。
こういうタイプが近くに来るたびに、嫉妬しなければならない。
あ〜、酔っ払って早く忘れたい。
さて。
古い友人である、あいつん家に行こうか。
それともどっか、ふらっとお店にでも寄ろうか…
「見たことのない店がある」
“ここでいいか”
「いらっしゃいませにゃ」
「こんばんにゃ。この町はねこ森町というの。深い時間ににゃると、夢森町ということもあるの」
「へぇ?」
“この店の…店員?”
初めて入る店内を見回してみる。
店の中から見ているだけで癒されるような、不思議な雰囲気を醸し出すねこが現れた。
違和感を感じた気がしたが、なぜかいつの間にやらその光景を受け入れていた。
店員らしきねこが説明しているの場所は、不思議な町にある、明かりがポツンと灯る一軒のお店。
お店の中は、ねこだらけ。
ねこカフェ?
「ちょっと違うにゃ。ここは“夜カフェ・夢森町“メニューはないにゃ。提供するのはシェフの気まぐれ料理にゃ」
夜もだいぶ更けた時間に現れるというお店。
もしかしたら夢かもしれないし、やっぱり現実かもしれない。
普通には来られないはずのねこ森町に、ひょんな場所から偶然入り込めてしまった…
そんな感じでしょうか。
この場所では皆いつも、記憶が曖昧になってしまうと言います。
でもそれは時間が経つと、よくある話。
実際にあったことなのか、夢だったのか…
それとも聞いた話だったのか、テレビで見たことだったのか、よく分からなくなってしまうことは誰しもあることです。
その現象と同じようなもの。
夢森町で時間を過ごすと、現実であった嫌なことも忘れがちになってしまうのです。
一生消えないシミのように、あんなに繰り返し思い出し、忘れられないことであったとしても…
そんな“夜カフェ・夢森町“にフラッと現れた若い女性。
「好きなところ座るにゃ」
「どうもー、ビールある?」
いつの間にか、行きつけのお店のように馴染んでいる。
「ないにゃ」
「ええ?」
“注意”
このお店には気まぐれ料理しかありません
「飲みたかったんだけどな。じゃあ、それでいいや。あんまお腹減ってないけど」
携帯をいじりながら料理を待っていると、ふと仕事のことを思い出してしまう。
ああいやだ。
だから酒飲んで忘れたかったのに。
“あいつ、私の資料の確認するように、だいぶ前から頼んでいたのに“
自分より後から頼んでいたはずの、同僚の可愛らしい女性の仕事を、先にやってあげていた上司。
“忘れられてんのかな?“
そう思って、進捗状況を上司に確認してみる。
「あ、ごめん。今ちょっと忙しくて」
そうか、忙しいのか。
でもあの可愛げのある、娘の仕事はやれるんだ。
あの子の仕事は確か、そんなに急ぎの仕事ではなかったはずだけど。
なるほど…
単純に可愛げのない自分の仕事は、後回しにされてしまっただけなんだな。
「ん…?」
そんな若い女性の前で、ねこさんがニコニコとおもちゃを持って立っていました。
続きます。